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地球サミットから30年、新時代における環境の世界へ向けて

一般財団法人日本環境衛生センター
理事長 南川 秀樹

 謹賀新年、2022年、壬寅(みずのえとら)の一年が始まります。日本環境衛生センターは今年も、新時代における環境と衛生の課題へ的確かつ迅速に対応し、多くの皆様と喜びを分かち合える活動に取り組んでまいります。
 リオデジャネイロでの地球サミットから30年が経ちます。朝夕に、コルコバードの丘に建つキリスト像を拝みながらリオセントロにあるサミット会場へ通った1992年6月を思い出します。あの頃から、環境の仕事とは何だろうかと、自問自答してきました。人類が地上に姿を現してから今日まで生活の場である自然全体を環境として理解し、先祖が築いてきたこの地球を健全な形で子々孫々に受け渡していくことこそ、環境に携わる者の使命だと、今は考えています。
 地球サミットの前に、ブルントラント委員会が報告書を取りまとめ、将来世代の欲求を満たしつつ、現世代の欲求も満足させる持続可能な発展について、制度化を含め如何に国際的な合意を実現させるか、大きな期待が世界から寄せられていましたが、当時の私には、その成果は不十分なものに思えました。しかし、リオから帰国して環境の仕事に多く携わる中で、気候変動枠組条約、生物多様性条約の合意など広範な分野で成果が挙げられたと評価できるようになりました。ノーベル物理学賞受賞者である真鍋淑郎博士のアメリカ国内での獅子奮迅の活躍を知ったのもサミット後でした。
 今世紀に入り、第二次環境基本計画が制定され、その中で、「私たちは、今まさに、環境からより多くのものを得ようとして環境に大きな負荷を与えてきた20世紀を終え、環境と共に生きる『環境の世紀』に移行しようとしている」と、明記されました。そして30年が経ち、環境行政は大きな流れを作り出しています。この歳月は、環境の重要性を確認し、そして行政が成熟するための時間だったのです。
 さらに遡ること20年、私がまだ大学生の時、アメリカから訪問中の学生と意見交換する機会がありました。何が今の日本で大きな問題かと問われ、私は公害(Public Nuisance)だと答えました。出身高校が三重県四日市市にあり、大気汚染に悩む人々を間近に見てきた私の素直な一言でしたが、相手からそれは環境汚染(Environmental Pollution)だとの返事が返ってきました。公害という言葉の所以を調べましたが、学部の大先輩で『恐るべき公害」などの著書がある宮本憲一教授によれば、「足尾鉱毒事件、大阪市内の甚大な大気汚染など社会問題が深刻化するに伴って、こうした問題を特定して対策を立てる必要上、大正時代の初めに、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、土壌汚染などの公衆衛生上の害毒を総称して公害と呼ぶようになった。公衆衛生上の害の略語かもしれない。」とのことでした。年々、状況は変化しています。
 現在の環境行政は、脱炭素化社会、資源循環社会、分散化社会の実現という大きな課題を達成すべく矢継ぎ早に政策が展開されています。昨年行われた国会の環境委員会では、地球温暖化対策法改正法、プラスチック資源循環法、自然公園法改正法という、正に目指すべき政策へ直接つながる法律の制定が行われました。こうした行政の進捗に対応して、現場で環境の課題に取り組む我々日本環境衛生センターも一丸となって進化していかなければなりません。現場・現物・現実という三現主義に忠実であることはもちろん、日々、変わり続けてまいります。「脱皮できない蛇は滅びる」とのニーチェの言葉が示す通り、社会的な役割を果たし生き残るのは、強いものや賢いものではなく、変化できるものです。工夫せずに前例の踏襲を繰り返していないか、挑戦せずに望みを捨てていないか、日々の仕事を振り返りながら逞しく歩を進める所存です。
 新型コロナウイルス感染症拡大の経営上の影響は広く、かつ大きく、日本環境衛生センターも例外ではありません。ただ、こうした出来事を通じて、エッセンシャルワーカーとして理解が広まった廃棄物収集運搬リサイクル業者の方々との交流が深まったほか、オンラインを活用したテレワークや海外を含む遠隔地との会議も普及しました。業者の皆様との付き合いは、現場の事情に詳しくなるために不可欠なものであり、これからも環境の守り手である方々が働きやすい環境づくりに努めてまいります。また、テレワークの活用は、これまで通勤時間として無駄に過ごさざるを得なかった時間が自分のものになるという歴史上の大きな出来事です。一方、直接コミュニケーションをとることの重要性も確認できました。仕事の話という枠を取り払い、様々な内外の事象について対面で率直な意見交換を行うことの価値が、以前にもまして分かるような気がします。
 更に、コロナ禍は、ウイルスにとって国境は何の意味もない、環境や衛生の問題は本来的に地球規模のものであることを思い起こさせてくれ、国際協力の重要性を再確認しました。地球温暖化、海洋廃プラスチック、越境する大気汚染物質や廃棄物など様々な課題へのより積極的な取り組みの必要性も再確認したところです。
 干支であるトラは、私が頻繁に訪れる中国では神の使いとされ、縁起物として親しまれていますので、飛躍のきっかけを作ってくれるのではないでしょうか。どうぞ、今年一年、日本環境衛生センターをよろしくご指導ください。

2022年1月4日