開発途上国の能力強化・人材育成(招へい研修の実施等)

開発途上国の人材育成への支援:行政官などを日本に招へいしての研修の実施

 開発途上国における廃棄物管理の改善や大気汚染対策などを通じた環境問題の解決は、政府の主導のもと民間企業や住民を巻き込んで実施していく必要があり、そのためには解決に携わる人材の育成が不可欠です。
 かつて高度経済成長に伴う深刻な公害問題を克服してきた日本の経験や技術は、現在の開発途上国の環境改善に非常に有用なものです。JESCは環境省やJICAのプログラムを通じて、途上国の行政官などを招へいし、こうした日本の経験や技術を学んでもらう研修を長年にわたり実施しています。

JICA課題別研修

(1)固形廃棄物管理の基礎(A)

 中南米諸国・カリブ海諸国では、首都への過剰な人口集中により、種々の都市環境問題が発生してきており、とりわけ都市廃棄物(一般廃棄物及び事業系廃棄物)・産業廃棄物を中心とした環境汚染が大きな問題となっています。
 この研修では、札幌市の協力を得て、日本の地方自治体が有する都市廃棄物の管理行政、3R政策、住民啓発活動の推進などの経験を移転し、各国の都市廃棄物管理担当の行政官の能力向上を目的としています。その結果、中南米諸国・カリブ海諸国における都市住宅環境の向上への寄与が期待されます。
人材育成1

札幌市のリサイクル工場を視察

(2)廃棄物管理データの戦略的活用

 廃棄物管理の問題点を明らかにし、それらの改善に向けた目標の策定を容易にし、住民の理解及び協力を促し、民間企業などの参画を推進していくためには、ごみの発生量、回収量、処理量といった廃棄物管理データが重要です。しかし、こうしたデータを収集し、効果的に活用している国は多くはありません。
 この研修では、開発途上国の都市廃棄物担当の行政職員が、廃棄物収集・処理データを収集・把握し、廃棄物処理計画の作成及び廃棄物処理施設の建設、管理・運営計画の作成に活用できるようにすることを目的としています。研修では、講義に加え、タイム&モーション・スタディ(ごみ収集効率調査)実習、データ処理演習などを行います。
人材育成2

藤沢市におけるタイム&モーション・スタディの様子

(3)廃棄物発電導入に向けた技術能力向上

 廃棄物発電施設とは、最終処分場に持ち込まれるごみ量を減らすために、衛生的なごみ処理を可能とする焼却施設に、焼却により発生する熱を発電に利用する設備を併せた施設です。
 この研修では、開発途上国において廃棄物発電施設を適切に導入できるよう、廃棄物発電に関する技術一般に加え、計画策定、建設、運営管理、焼却残渣の処理について学びます。
人材育成3

武蔵野クリーンセンター(廃棄物発電施設)の視察

(4)大気環境管理に向けたキャパシティビルディング

 発展途上国の大都市においては、人口集中と経済成長、産業化により、製造工場などの汚染物質の固定発生源と自動車などの移動発生源による大気汚染物質排出が増加しています。このような大気環境汚染は、人体や生態系に大きな損害をもたらします。
 この研修では、日本がかつて深刻な大気汚染を克服した経験に基づき、大気汚染対策についての政策や技術を紹介することにより、参加各国における大気保全対策の改善・強化に資することを目指します。
人材育成4

大気汚染計測機器の操作実習

環境省・循環産業海外展開促進に向けた研修

 日本の環境保全及び循環資源において先進的な技術を有している循環産業を、廃棄物問題を抱える国々に対して国際展開し、世界規模で環境負荷の低減を実現するとともに、日本経済の活性化につなげるため、環境省では「環境インフラ海外展開基本戦略」を策定し、日本の企業や地方自治体が有する知見や技術の活用を通じた、循環産業の海外展開を支援しています。
 この研修は、海外展開支援の一環として、日本企業などによる海外展開が想定される国を対象にした研修として、各国の行政官や廃棄物担当の技術者などを日本に招へいしています。環境省からの請負事業として、日本の廃棄物処理・リサイクル政策及び各種廃棄物管理関連技術について広く理解してもらうことを目的として実施しています。
人材育成5

横浜市鶴見資源化センター視察


人材育成7

(株)YAMANAKA川崎リサイクル工場視察

人材育成6

東京都内のごみ収集現場視察


人材育成9

ライブ講義の様子

JICA草の根技術協力

インドネシアにおける住民参加型廃棄物管理(2017年~2020年実施)

 バンドン市は首都ジャカルタから西に約200キロに位置する西ジャワ州の州都で、人口250万人を擁する大都市です。近年の経済発展と人口増加に伴い増え続ける一般廃棄物をどのように処理するのかがバンドン市の緊急の課題となっていました。
 そこで、川崎市、(公財)地球環境戦略研究機関とJESCが実施団体となり、JICA草の根技術協力事業を通じてバンドン市の廃棄物管理の改善を支援しました。バンドン市が市民や事業者に対して、資源化対象品目の適切な分別を促し、また分別後の廃棄物をバンドン市自らが資源化し処理する能力を向上することにより、3Rの適切な実施がなされることを目指しました。
 JESCは、事業系の有機性廃棄物(食物残渣など)の実態調査と組成調査を行い、適切な分別回収に係る能力向上のための研修を、事業者と収集運搬者を対象に実施しました。
人材育成8

有機性廃棄物の実態調査の様子